当社は、2022年3月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。
当社グループは、「もっとも高品質で環境に配慮した製品を」「どこよりも競争力のある価格で」「必要なときに確実にお届けする」という基本三本柱を実践し、調達・開発・製造・物流・リサイクルのバリューチェーンを通じた環境負荷低減の取り組みを進めております。
1990年に容器の不買運動というリスク認識から開始した使用済み容器のリサイクルは、当初の6カ所から消費者の皆様のご協力を頂きながら拡大し、今では10,000カ所以上の回収拠点をもつ社会インフラとして定着しています。
さらに当社グループは、製品のプラスチック使用量削減や生産性の向上、積載効率改善などを通じてLCA(ライフサイクルアセスメント)の各ステージにおける環境負荷低減を進めるとともに、リサイクル製品の素材製造工程におけるCO2削減効果を付加価値としてお客様に提案し、販売機会を拡大してまいりました。
今後、サプライチェーン全体でのCO2排出削減が一層求められることを重要な経営課題と認識し、 TCFD提言の枠組みを通じて、①気候変動に関するリスクやシナリオを想定し、大きく環境が変化する中でも何も起こらない強靭なガバナンス体制を運用すること、②顧客ニーズを迅速にとらえ、事業の持続的成長のための機会として活かすことの両面において、グループ一丸となって取り組んでまいります。
要求項目 |
ガバナンス |
戦略 | リスク管理 | 指標と目標 |
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項目の詳細 | 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する | 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、重要な場合は開示する | 気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・評価しているかについて開示する | 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、重要な場合は開示する |
推奨される開示内容 | a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする | a)組織が選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会を説明する | a)組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する | a)組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する |
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理するうえでの経営者の役割を説明する | b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する |
b)組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する |
b)Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する | |
c)2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する | c)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する | c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する |
(気候関連のリスク及び機会について取締役会による監視体制)
当社グループは、以下のプロセスを通じて、気候関連のリスク及び機会の評価・管理、気候関連の方針・戦略・取り組み(エフピコ・エコアクション2.0)について取締役会による監視体制を構築しております。
●気候関連のリスク及び機会について
1)環境課題の重要事項は、月に一度、取締役、執行役員及びグループ会社社長が参加する経営会議において各部門より情報共有、議論されております。
例:積載効率改善効果(自社物流における積載効率の改善によるScope1削減)
生産性改善効果(電力使用減少によるScope2削減)
再生原料の生産量及びコストの状況(石油資源使用減少によるScope3削減)など
2)経営上特に重要性の高い案件については、取締役会において議論されております。
例:太陽光発電による再生可能エネルギー調達(再エネ使用量増加によるScope2削減)
投資案件における使用済み容器の回収選別・物流への影響(輸送距離短縮によるScope1・3削減)など
●気候関連の方針・戦略・取り組み(エフピコ・エコアクション2.0)について
1)部門横断組織である「環境戦略・TCFD推進管理委員会」が、グループ全体の環境戦略やTCFD推進について議論し、方針・戦略を立案します。「環境戦略・TCFD推進管理委員会」の運営にあたっては、社長直轄の環境に関する専門組織であるサステナビリティ推進室が事務局を担います。
2)グループ全体の環境戦略のもと、製品・生産・物流・販売・オフィスの各部門に設置したWG(ワーキンググループ)が自主目標を立て、気候関連課題をはじめとする環境課題の解決に向けた取組みを実施いたします。
3)各WGは、四半期に一度、取組みの進捗状況を「環境戦略・TCFD推進管理委員会」に報告します。
4)「環境戦略・TCFD推進管理委員会」は、方針・戦略及び取組みの進捗状況について、毎年取締役会へ報告します。
5)取締役会は「環境戦略・TCFD推進管理委員会」からの報告を受け、様々な視点・知見をふまえモニタリングを行います。
(気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割)
代表取締役社長が環境戦略・TCFD推進管理委員会の委員長となり、気候関連のリスク及び機会を評価・管理すること、気候関連の方針・戦略を策定しグループ全社で取組みを推進することに関して責任を担っております。
エフピコ・エコアクション2.0の詳細については、下記よりご覧ください。
(移行リスクと関連する機会まとめ)
短期:1年以内、中期:1年~5年、長期:5年以上
分類 | 項目 | リスク 発生時期 | 想定される事業インパクト | |
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リスク | 機会 | |||
政策/規制 | 炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 中期 | ●炭素税の導入により、原材料コスト・製造コスト、物流コストが増加する ●CO2 削減目標の達成のために、再エネへの変換が求められ、 設備・グリーン電力購入等の対応コストが増加する |
●CO2排出削減に貢献するエコ製品の需要が増加し、販売機会が広がる可能性がある |
プラスチック規制 | 長期 | ●バージンプラスチックを使用した容器包装に対する課税、代替材料の使用等による支出が増加する | ●再生原料を使用したエコ製品及びプラスチック使用量を削減した製品の販売機会が増加する可能性がある | |
業界/市場 | 重要製品/商品価格の増減 | 中期 | ●化石燃料の価格高騰により、製品の原材料コストが増加する ●石化由来からの代替原材料への転換に伴うコストが発生する |
●再生原料を使用したエコ製品及びプラスチック使用量を削減した製品の販売機会が増加する可能性がある |
顧客・消費者行動の変化 | 中期 | ●よりサステナブルな製品が競争優位となり、既存製品が不買運動に遭う可能性があり、売上が減少する | ●サプライチェーン全体で脱炭素を目指す機運の高まりにより、ライフサイクル全体でCO2排出削減に貢献するエコ製品の販売機会が増加する可能性がある | |
技術 | 再エネ・省エネ技術の普及 | 長期 | ●再エネへの移行が進み、再エネ設備の追加導入コストが発生する | ●省エネ・再エネに資する技術の補助金政策が導入された場合、設備投資・研究開発費が低減できる |
評判 | 顧客・投資家の評判変化 | 中期 | ●環境経営のための対応コストや開示・エンゲージメントコストが増加する | ●環境対応を進めることで、低金利のグリーンファイナンスなどにより資金調達コストが低減する ●ESG投資の増加 |
(物理的リスクと関連する機会まとめ)
分類 | 項目 | リスク 発生時期 | 想定される事業インパクト | |
---|---|---|---|---|
リスク | 機会 | |||
慢性 | 降水・気象パターンの変化 | 中期 | ●降雨・強風の増大に伴うサプライチェーンの断絶、製品生産の遅延・停止による販売機会の損失が発生 | ●BCPへの取り組みにより顧客から高評価を得る可能性 |
平均気温の上昇 | 中期 | ●夏の電力需要増加に伴い電力価格が高騰し、製造コストが増加する | ●BCPへの取り組みにより顧客から高評価を得る可能性 | |
急性 | 異常気象の激甚化 | 短期 | ●サプライチェーンの断絶、製品生産の遅延・停止による販売機会の損失が発生 ●拠点の資産価値が低下することにより、保険料が増加する可能性 |
●BCPへの取り組みにより顧客から高評価を得る可能性 |
エフピコグループでは、2030年をターゲットに、気候変動対策を推進する2℃シナリオ(※)及び気候変動対策が推進されない4℃シナリオにおける気候シナリオ分析を実施し、整理したリスク・機会による財務影響額を試算いたしました。
分析の結果、再生原料の調達量拡大、エコ製品の販売拡大、再生エネルギーの活用、新たなリサイクル手法の確立等を通じて、影響を抑えることができることを確認いたしました。
(分析の主な前提)
項目 |
気温上昇幅 |
2030年の想定 | 参照シナリオ、参照資料 | |
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炭素税 |
2℃ | 11,000円/t-CO2 |
国際エネルギー機関(IEA) |
Net-Zero Emissions Scenario |
4℃ | 導入無し | 同上 | Stated Policies Scenario | |
プラスチック課税 |
2℃ | 122,400円/t |
同上 Centres for European Policy Network |
ETP2017 The EU Plastic Tax Greenwashing New Revenue for the EU Budget |
4℃ | 導入無し | |||
電力価格 | 2℃ | 1.2円/kWh増 (2020年比) |
IEA | Sustainable Development Scenario |
4℃ | 1.2円/kWh減 (2020年比) |
同上 | New Policies Scenario | |
原油価格 | 2℃ | 14%減 (2020年比) |
同上 | Sustainable Development Scenario |
4℃ | 83%増 (2020年比) |
同上 | Stated Policies Scenario |
(※)2021年11月に開催されたCOP26において、パリ協定以降努力目標とされてきた1.5℃目標が事実上の新たな目標となりました。当社グループは、現時点で外部データが豊富に存在する2℃シナリオに基づき分析を行っておりますが、1.5℃シナリオにおいても2℃シナリオに準ずるリスク及び機会を認識し、気候変動への適応・緩和策を実施してまいります。
(シナリオ分析結果)
▲:PLにプラスの影響 ▼:PLにマイナスの影響
インパクト試算項目 | リスク |
対応を行わない場合の財務影響 | エフピコグループの対応 | |
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【2℃シナリオ】 |
炭素税導入によるコスト上昇 |
▼ ▼ |
■製品を通じた社会全体でのCO2排出量削減 ・再生原料を使用したエコ製品の販売拡大 ・プラスチック使用量削減による省資源化 ―三井物産プラントシステム株式会社と電力購入契約(PPA)を締結 |
|
【2℃シナリオ】 |
プラスチック税導入によるコスト上昇 |
▼ ▼ ▼ |
■製品を通じたプラスチック使用量削減 ・発泡素材活用による省資源化 ・素材全般に関する情報収集 |
|
【2℃シナリオ】 |
電力料金上昇によるコスト上昇 | ▼ |
■再生可能エネルギーの活用 ・自社拠点の屋根上において太陽光発電設備を順次導入 ―三井物産プラントシステム株式会社と電力購入契約(PPA)を締結 |
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【2℃シナリオ】 |
原油価格下落による原材料コスト低下 |
▲ ▲ |
■製品価格反映 | |
【4℃シナリオ】 |
電力料金下落によるコスト低下 | ▲ |
■再生可能エネルギーの活用 ■省エネの取り組み |
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【4℃シナリオ】 |
原油価格上昇による原材料コスト上昇 |
▼ ▼ ▼ |
■製品を通じたプラスチック使用量削減 |
|
【4℃シナリオ】 |
気象災害増加による保険料の増加 | ▼ |
■BCPの取り組み |
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【共通】 |
環境配慮製品への需要増加 | 定性評価 |
■再生原料を使用したエコ製品の販売拡大 |
エフピコグループでは、「もっとも高品質で環境に配慮した製品を」「どこよりも競争力のある価格で」「必要な時に確実にお届けする」ことにより、食の安全・安心という社会的役割を果たし続けていくために、ビジネスモデルの持続可能性にとって重要なリスク及び機会の観点から、重要課題(マテリアリティ)を定めて、様々な取り組みを行っております。マテリアリティは環境戦略・TCFD推進管理委員会にて作成し、取締役会の承認を経て決定しております。気候関連のマテリアリティとして、「CO2排出削減」が特定されております。
エフピコグループのマテリアリティについては、下記よりご覧ください。
(全社的なリスク管理)
気候関連リスクを含む全社的なリスク管理については、取締役、執行役員やグループ会社の代表者が参加する経営会議(毎月)や情報交換会(毎週)を開催し、リスク発生の未然防止ならびにリスク管理に取り組む体制を構築しております。気候関連については、製品・生産・物流・販売・オフィスの各部門に設置したWG(ワーキンググループ)が主体的に様々な目標を立てCO2排出量の削減に向けた取り組みを実施しており、環境戦略・TCFD推進管理委員会がこれらの進捗状況及び結果の報告を受け、評価を行っております。
(リスクサーベイの実施)
エフピコグループでは、大規模地震や大型台風、豪雨による水害など、自然災害による被害を最小限に抑止し、また火災や労働災害の発生を未然に防ぐことを目的に、工場、配送センターなど事業所ごとのリスクサーベイを定期的に行っています。リスクサーベイでは、外部の専門コンサルタントが直接事業所を訪問し、様々な事故の危険度について調査することで、リスクの洗い出し、リスクの分析・評価を行います。この内容を基に、事業所と協議の上、リスクの回避、軽減のための対処を行い、更に効果の検証を行うことで、マネジメントシステムの一環としています。
当社グループは、製品ライフサイクル全体を通じて様々なステークホルダーとともに環境負荷低減に取り組んでまいりました。昨今の地球温暖化による気候変動という社会課題に対し、当社グループが果たす責任とその役割として、脱炭素社会の実現に向けて新たな「脱炭素」の中・長期目標を策定しました。
新たな目標値として、【2031年3月期までにCO2排出量(Scope1・2)31%削減】及び【2050年度までにCO2排出量(Scope1・2)の実質ゼロ】を目指します。
(温室効果ガス削減ロードマップ)
(目標達成に向けた具体的な取り組み)
・生産部門については、自家消費用太陽光発電設備の導入と、調達電力の再生可能エネルギー化をさらに推進し、主要工場からCO2排出量の少ない設備を積極導入します。
・物流部門については、購入電力の再生可能エネルギー化を推進するとともに、配送トラックのEV化については経済合理性を勘案しながら導入検討を行います。
・オフィス部門については、オフィスにおける使用エネルギーの再生可能エネルギーへの転換と、照明などのLED化による省エネを促進し、また営業車のEV化も積極的に行います。
・あらゆる部門において生産性を向上し、経営の効率化を図ります。
指標 | 目標 | 実績 | 目標 | |
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2020.3期 | 2022.3期 | 2031.3期 | ||
当社事業拠点からのCO2排出量(Scope1・2) |
2031年3月期までに |
231,637t |
226,479t | 159,830t |
エコ製品※販売によるCO2削減貢献量 | 2031年3月期までに 27.2万t (2020年3月期比170%) |
16万t | 17万t | 27.2万t |